海外在住の方が日本の企業と取引をする際に、知っておきたいのが「税関連の書類」。
実は、日本の会社から報酬を受け取る場合、きちんと手続きをしていないと租税条約を結んでいる国でも、日本側で約20%の税金(源泉徴収)が引かれて振り込まれてしまう仕組みになっています。
実際私は現在オーストラリア在住で、日本の企業とフリーランスとして取引をする際に、いくつかの書類の提出を求められました。
以下、私が実際に日本の企業に提出した書類と情報になります。
初めてのことでATOに電話したり、慣れない税書類を記入するのが少し大変だったので、同じような状況にいる方へ向けて、「どんな書類や情報が必要なのか」「どういうふうに記載したらいいのか」をまとめてみました。
※今回はオーストラリア在住者向けの記事ですが、特に日本と租税条約を結んでいる他の国にお住まいの方にも似た部分があると思います。日本と取引する海外在住フリーランスの方はぜひ参考にしてみてください。
前提:租税条約について

まず前提としてオーストラリアと日本は「租税条約」を結んでいます。
日本と租税条約を結んでいる国の一覧
【アジア・オセアニア】
オーストラリア、ニュージーランド、韓国、中国、香港、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、インド、インドネシア、マレーシア
【ヨーロッパ】
イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、オランダ、ベルギー、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、ポーランド、チェコ、ハンガリー
【北米・中南米】
アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル
【中東・アフリカ】
UAE、南アフリカ、エジプト、トルコ
最新情報は以下より
国税庁:租税条約の一覧
租税条約とは、両国間で同じ所得に対して二重に税金がかからないようにする取り決めのことです。
たとえば、オーストラリアに住んでいて、オーストラリアで税金を納めている人が、日本の会社から報酬を受け取る場合、もし日本でもその報酬に税金がかかってしまうと、オーストラリアと日本の両方で税金を払う「二重課税」になってしまいます。
この二重課税を防ぐために、租税条約が結ばれており、一定の条件を満たして正しい手続き(書類提出)を行えば、 「私はオーストラリア側で税金を払っているので、日本側で税金は引かないでね」と源泉徴収を免除してもらえる仕組みがあります。
ここで注意したいのが租税条約結んでいるからといって自動的に源泉徴収が免除されるわけではないという点はです。
なぜ書類の提出が必要なのか
日本の会社側は法律上、税に関する書類の提出を行わなければ、報酬に対して源泉徴収を行う義務があります。そのため、きちんとした書類を提出して「海外在住であることを証明する」必要があるのです。
税務署に誤解されないためにもこれから説明する書類の提出が必要になります。
提出のタイミングに注意
ここで注意したいのが、書類の提出時期です。
日本の会社は、支払日の前日までに税務署へ届出書を提出している場合のみ、その支払い分について源泉徴収を免除または軽減してもらうことができます。
もし、支払日を過ぎてから提出した場合は、その支払分には優遇措置が適用されず、20.42%が引かれてしまいます(次の支払分から適用可能)。
そのため、自分側は会社へできるだけ早めに書類一式を渡すことが大切です。
会社側も、税務署に余裕を持って提出できるように進めておくのが安心です。
では、具体的にどんな書類が必要でどこから取得できるのかを説明していきます。
オーストラリアで日本の会社と働く際に必要な書類と取得方法

オーストラリアから日本の会社とリモート勤務するときは、振り込み日前までに次の3つの書類が基本になります。
書類 | 主な目的 |
---|---|
① 租税条約に関する届出書 PDF | 日本側に「私はオーストラリア居住者なので日本で源泉徴収は不要」と申告するため |
② 特典条項に関する付表(豪)PDF | 租税条約の源泉徴収の免税を受ける正当な対象者(居住者)であることを自己申告するため |
③ AUの居住証明書(ATO発行) | オーストラリア税務署が発行する 公的な居住証明 として日本の税務署に提出するため |
それぞれの取得方法や書き方について詳しくみていきます。
※ 法人ではなく、フリーランスとして働く場合の書き方を紹介します。
① 租税条約に関する届出書(日本の税務署向け)
租税条約に関する届出書は日本の会社に「私はオーストラリアに住んでいて、税金はオーストラリアで納めています」と伝えるための書類です。
最初この書類を見た時は、お堅い言葉が並んでいたので「うわ、難しそう…」と思っていたのですが、いざ記入してみると自分で書くところはそんなに多くなかったです。
最新情報は国税庁の租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)をご覧ください
記入例
簡単な記入例は以下になります。
※会社側が記入する部分も多く、私の場合自分側で記入する項目は1ページ目のみだっため1ページのみ貼り付けてます。あくまで記入例のためご自身でも記入方法をお確かめください。

補足:1番最初の「日本国と オーストラリアとの間租税条約第 ○条第 ○項」の部分は、何所得として分類されるのかによります。フリーランスの場合は、日本国とオーストラリアとの間租税条約第7条第1項となります。
② 特典条項に関する付表(豪)
※これは、①の「租税条約に関する届出書」だけでは足りないという決まりがあるため、基本的にセットで提出する必要があります。
記入例
オーストラリア以外の国の特典条項については国税庁のサイトにて各国の特典条項に関する付表にてご覧いただけます。
簡単な記入例は以下になります。
※会社側が記入する部分も多く、個人の記入が必要なところを簡単に記載しています。あくまで記入例のためご自身でも記入方法をお確かめください。


書いたあとは、日本の会社に渡して、会社が税務署に提出してくれます。
③ 居住証明書(Certificate of Residency)
オーストラリアの税務署(ATO)からもらう、「あなたはオーストラリアの居住者です」という公式な証明書です。
正直、これが1番時間がかかって面倒でした。
ただ、これがいちばん強力な証明書になります。
ATO発行のオーストラリア居住証明書の取得方法

申請書は、ATOのCertificate of residency and certification of overseas tax reliefのページにある、Get the formよりダウンロードできます。
STEP1で記載したフォームを郵送またはMygovのメールボックスにATO宛に送ります。
それぞれの内容について詳しくみていきます。
Certificate of residency and certification of overseas tax relief for individuals
これは居住証明をATOに申請するための、フォームです。
全6ページあるので、1ページ目だけ載せておきます。
基本的に自分の個人情報とどの期間の居住証明が欲しいのかなどを記入していくことになります。

記入し終わったらABNを持っている人はATOとMYgovを紐づけて、郵送またはMygovのメールボックスから送ることができます。
私はメールにてこの申請書を送りました。郵送だと記入漏れある場合、再送しなければならないリスクがあることを踏まえると、メールで送ることをおすすめします。
Mygovのメールボックスの使い方
私はこのMygovのメールボックスの存在を知らなくて、ATOに「フォームの最後にメールでも送れると書いてあるのにメールアドレス載ってないです」と電話しました…
個人情報を扱うものであるため、Mygovが用意しているセキュアメールを利用する必要があるとのことでした。
そのセキュアメールの場所が分かりにくくて…
セキュアメールの場所
Mygovにログインして、Linked servicesの中にあるATOをクリック後、以下の添付画像の画面になるので、My profileの中にあるCommunication > Secure mailを選択し、ページ内にNewボタンがあるのでそれををクリックするとATOにメールを送ることができます。

メールに記入したCertificate of residency and certification of overseas tax relief for individualsのPDFを貼り付けます。
セキュアメールに送信後、「記入漏れがあるよ」と返信が来たので、記入して再送後「10営業日内に送られます」と返信が来ました。
私の場合は1週間ほどでCertificate of Residencyが送られてきました。
実際の居住証明書(Certificate of Residency)

郵送まで時間かかるので、日本の会社と取引が決まったら早めに取り掛かるのをおすすめします!
その他に必要になることが多い「本人情報」
私の場合、取引先の会社から以下の情報もあわせて聞かれました。
• オーストラリアでの電話番号
• TFN(Tax File Number、オーストラリアの納税者番号)
• 在留資格および在留期間が分かるもの(ビザなど)
• 入国年月日
まとめ
以上、オーストラリア在住でフリーランスとして日本の会社と取引をする際に必要な書類について紹介しました。
提出する書類が多くて戸惑ったので同じ状況にある人の役に立てたら幸いです。
提出のタイミング(振込日前まで)にも注意しながら、早めに準備して日本の会社に渡しておくと安心です。
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